文字と気持ちの墓場

二人の息子のおかーちゃんしながらコスプレと同人活動やってます

生きにくい時はずっと大島弓子の漫画を読んでいた、という話

大島弓子の漫画を読んで下さい。

以上!!!!!!!!!!!!!


いやほんと、これ以上言うことはないんですけど、今日久々に大島弓子さんの読んだことない漫画買って、整形外科の待合の時間に読んでいたらうっかり泣いてしまってもうほんと、私の周りにこれ読んだことない人の方が多いっておかしくない?????と思ったからブログに書いています。


大島弓子さんは、1978年にあの綿の国星を描いたもうほんまめちゃくちゃ有名な漫画家さんです。綿の国星知らないって言われたらショック死するので言わないでください。

まあとにかく、私が生まれるより前にめちゃくちゃ活躍した漫画家さんなんですが、私は小さい頃から彼女の漫画をよく読んでいました。


いやあのさ、今みたいにスマホもね~し、というかパソコンすらね~し、インターネットなんて、カリ、カリ、カリ……ととにかく遅くてメール送るくらいしか用途ね~し、アニメはゴールデンタイムにやっていたのをご飯食べながら見て、録画もVHSだし、ラジオはカセットに録音するしかね~し、なんかもうね、そういう時代だったんですよ。

小学校時代ってとくに、マジでめちゃくちゃ時間あるじゃないですか。体感。でもシュッシュとスマホ見れるわけじゃなくて、かといって空き時間全部体動かして遊ぶわけでもなし、そのころからオタク気味だった私はもうとにかく、漫画を読んでたんですよね。

毎月買ってくれるなかよし。妹はりぼん派だったからりぼんも。そして一月に一回くらい親が買ってくれる単行本。それと、家に元からある漫画。

手塚治虫萩尾望都と、そして大島弓子。親の漫画だったんですよね。親とはまあ色々あるんですけど、これらの漫画を家に置いていてくれていたことだけはほんと感謝しています。


まあ、古いんですよ。あの当時読んでも「古っ!!」って思う画風。話の内容も小学生にはわかんなくて、でもよくわかんないけど、何度も何度も繰り返し繰り返し読んで。よくわかんないけど、なんか好きだな、いいなと思いながら二十歳の時に自分でも買いました。


ぶっ倒れるかと思った。自分の全ての好きがそこに詰まっていましたよね。

 

今日買ったの「つるばらつるばら」って文庫本なんですけど、もうほんとうにね、すごいんですよ。「夏の夜の獏」って話が入ってるんですけど、設定がすごすぎる。

『ぼくはまるでガリバーのようだ』と作文に書く小学生8歳の男の子が主人公。

この子は中身が成熟していて、大人の姿で描かれています。そして彼には、周りの人間が精神年齢と見た目年齢が同じに見える(ように描かれてる)んですね。

いじわるな小学校の先生は五歳くらいの女の子だし、家出した19才のお兄ちゃんは10才くらいのやんちゃぼうず。お父さんお母さんも小学生くらい。そしてボケたおじいちゃんは赤ちゃんで描かれています。

見た目と中身と彼らの設定(役割)がちぐはぐでもう見ているだけでパーン!ってなりそうなんですけど(最高)、なんというかね、それで描かれてもお父さんとお母さんは父母だし、「僕」は小学生の男の子なんです。たとえ、二十歳くらいの青年の姿で描かれていようとも。その辺の話のバランスが狂いそうなくらいすごいんですわ・・・・・・・・・。


でも、誰しも思ったことあるじゃないですか。「こいつの精神年齢何歳?」みたいな。私も今、母親として●才として立っているけど、中身は18歳くらいからそんなに変わってないし、多分これからも変わらないかもしれない。そういうドキッとさせるようなのをね、め・・・・・・・・・・・っちゃくちゃ自然に、説明なく描くんですよ。すごくないですか。いやもうほんとすごいの。


大島弓子さんの漫画のすごいとこって、説明があんまないとこなんですよね。でも伝わるし、時々胸がぎゅうってなる。


「ダリアの帯」っていう漫画で、自分の子供のことを苦手な親が、子どもの夫にこう話すんです。

 

『あの記憶…どうしてあんなに覚えているのかと不思議です。

 3才のときの何月何日! 何月何日!

 4才のときの何月何日! 何月何日!

 5才のときのいついつ! いついつ!

 昨年のきのうの! 今年の今日の!

 

 1日かかってもいいきれぬ その孤独の日々の回顧

 

 すべてわたしが黄菜(きいな)(主人公)を無視し痛めつけた日々の記憶だというのです』


母親は自身の子供に『恐怖』していると訴え、夫に全てを託し去っていきます。これを読んだとき、こんなにさびしい場面なのに、私は「ああ、分かってくれる人がいた」と思いました。


私がずっとずっと小さい頃から抱えてきたことを、こうやって誰かが言葉にしてくれている。そのことに、どれだけ救われたかわからない。


私自身、あんまり母親と上手くいってなくて、未だに母親にされたことを丁寧に思い出して心にしまいこむという癖があるのですが、なんというかこの台詞はそれを受け止めてくれるように思いました。私だけじゃなかった。私だけじゃなく、こうして言葉にしてくれて、こういう風に親にぶつける子供がいる。


きっとこのセリフを描いた人は、私のこの寂しさをわかってくれるんだろう、っていうなんとも言えない傲慢な、でも優しさが広がっていくような気持ち。


いやなことを思い出す癖は、『ダイエット』という短編でも出てきます。


『いろんな昔のことを 馬鈴薯ほりみたくゴロゴロ意識上に掘りおこすの


そしてそれらをまるで昨日の出来事のように新鮮な馬鈴薯(思い出)にみがきあげてしまうわけよ


それで安心してあたしはまた馬鈴薯(思い出)をひとつひとつていねいに箱につめて意識の奥深く埋めるわけ』

 

悲しいこととか辛いことって、忘れろって言うじゃん。時間が解決するよって言うじゃん。


でも中にはね、そのへんのことを執拗に、こうやってぴかぴかに磨いちゃう子がいるわけですよ。私もそうなんですが。

生きにくい。しんどい。つらい。

大島弓子さんが描くのは、そういった「ちょっとしんどいなぁ」と思ってる子が多いように思います。だからすごくしんどい時、「ここにいた」と、仲間を見つけたような気持ちになるわけです。


その最上級が「バナナブレッドのプティング」の衣良(いら)ちゃんだと思うんですが、もうこんなにヘンテコで生きにくくなってる子がね、本人はケロッとしてるんですよね。辛いけど、どこか明るくて、でも心の内で「あぁ、わたしはおかしいんだろうなぁ」ってすごくすごく絶望してるの。


おぼえ、ないですか。私は本当に、昔ずっとずっと絶望していて、でもそれを出すなんてダサいことはしたくなくて、親も大嫌いで学校も嫌いでどこにも居場所がなくて、ずっとずっとずっと、一人だと思ってた。助けてって思ってるのに言えなくていじけてて、世界が壊れる日のことを望んでいた。


衣良ちゃんはもっとまっすぐで、もっと透き通って絶望してる子でね、めちゃくちゃ痛々しくて、めちゃくちゃ心が綺麗な子なんですよ……。

彼女が生きやすいように、少しでも息ができるように、周りのいろんな人もほんとうにまっすぐでね、でもどうしても人間だからぐちゃぐちゃに絡まっちゃうの。それがまた愛しくて……胸が締め付けられて……。


長い長いお話の中で、ようやく最後に衣良ちゃんは吐き出せるんです。


『わたしは自分をとじこめてしまわなければ いますぐしなければ

じゃないと わたしは人に 危害を加えるの


わたしのはとくべつなの とくべつなのよ』

 

そこで、そんな衣良ちゃんにかけられる言葉がね………ほんとうにね…………めちゃくちゃ救われるので…………。絶対に読んで欲しい………こんな救いがあるのか、って私は頭を殴られたので……。

 

とくべつで、ひとりぼっちで、壊れてるの、怖いの、人喰い鬼に食べられるの、鬼になるの、とわんわん泣く女の子は、思春期特有のあれと言ってしまえば簡単なのかもしれません。

でもそのつらさを、さびしさを、拾い上げて、ふぅと埃を払ってくれる。全くなくなるわけじゃないけど、ここが痛かったね、ずっと見てたよ、って言ってくれる。


大島弓子さんの漫画は私にとってそういうものです。わかってくれるものがある、わかってくれる言葉がある。意味がわからない小学生の頃から、おまじないのように、お守りのように読んでいたのはそうだったからかもしれません。


他にもめちゃくちゃね、いろんな人が出てくるんです。学校に行けない子、好きな男の子が自分のお姉ちゃんを好きになった子、女の子の前世を持つ男の子、自分を二十歳だと思っているおじいさん……


説明なんてなくて、ただ目の前のことだけを淡々と、静かでしみいるセリフで書いていて、私はいつも繰り返し繰り返し漫画を読んでしまいます。

いやもうほんまにいいんですよ………めちゃくちゃいいんですよ………機会があればほんとにぜひ読んで欲しいです………某セールでまだ買ってない人、文庫なんで何百円かで300ページくらい読めちゃうんで……よろしくお願いします!!!!!!!!

 

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